信楽在住の陶芸家 谷穹(たにきゅう)の個展を開催いたします。
室町時代に信楽で作られていた「古信楽」を再び作り出すこと、室町時代の人々の美意識と遊び心を現代的な視点から捉え返すこと。
谷はこれまで、器を通じて「かつて」と「いま」を架け橋しようとする企画のもと、制作・発表を行ってきました。
本展において谷は、空間を設え、その中に甕(かめ)を一点据えます。
甕という器と京都市立芸術大学ギャラリ―@KCUAの空間が響きあう中へ歩み入るとき、鑑賞者はどのような風景に出会うのでしょうか。
ぜひご覧ください。
私の要素は「壷」です
「壷」の妙は「壷」でしかないことです。「壷」とは何も表現しないものです。
ゆえに、それはいつまでも不完全で不確定なものとして存在し、
季節に移ろいながら持ち主とともに枯れてゆきます。
壷のない国はありません。壷はその土地の風土によって大きく変化します。
壷はその国の歴史そのものを表しています。
その中でも古信楽(12世紀から15世紀)の壷は他に類を見ません。
無骨で粗雑にも見て取れる端正なつくりや、自然釉による独特の景色は、
存在そのものが「遊び」だと感じます。
「古信楽」は日本の美意識の根幹ともいわれています。
しかし、わたしの制作は再現を目的にしている訳ではありません。
世阿弥が芸にまつわる多くの書物を残し、民衆によって芸の評価がなされてきた、
室町幽玄思想の美意識を体現させたいのです。
私のもうひとつの要素は「仕組み」です。
くぐる またぐ かがむ よける ちかづく
のぞく すわる にじる さわる みあげる
場が観者の行動を提供する仕組みは、茶事などにもおおいに利用されてきました。
場に与えられた行動は滑稽で、人間的な要素を引き出します。
仕組みの中において壷は「うつわ」であり空(カラ)でもあります。
空間の中心であり彼岸です。
私の仕組みの要素は壷さながらの不完全さにあります。
本展は、京都工芸繊維大学美術工芸資料館が若手作家の育成支援を目的に実施している『未来の途中』プロジェクトの一環として開催されるものです。
昨年度、『これからの、未来の途中ー美術・工芸・デザインの新鋭11人』展(2015年1月~2月、京都工芸繊維大学美術工芸資料館)に出品した11名へのさらなる育成プログラムとして、
今年度、京都にある15の大学のミュージアムで組織される「京都・大学ミュージアム連携」のネットワークを活用して、京都市立芸術大学ギャラリ―@KCUAと京都造形芸術大学ARTZONEにおいて、展覧会を開催します。
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、8月にプロジェクト内公募を実施し、その結果、谷穹のプランが採択されました。
【関連イベント】
アーティストトーク
11月21日(土)15:00~
中ハシ克シゲ(京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻 教授)×谷穹
※参加費無料・申込不要
オープニングレセプション
11月21日(土)16:00~
(同時開催の「岡崎和郎/大西伸明 Born Twice」との合同レセプション)
会場:@KCUA2
休館日:月曜日(11/23(月・祝)は開館、翌11/24(火)を休館)
日時:2015年11月21日(土)- 12月6日(日) 11:00~19:00(最終入場18:30まで)
観覧料:無料
企画:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都工芸繊維大学美術工芸資料館
助成:平成27年度文化庁「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」
協力:京都造形芸術大学ARTZONE
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